Mariko Hino Portfolio

Contemporary Photography, Landscape, Off-Street, Still Life.

Tokyo Paradise

 

私は東京の都電電停近くで生まれ育った。4年前に母を亡くしているので、路地裏を撮り続けるこ とはそれと重なる部分が多い。3.11の頃から、東京での再開発が目立つようになってきたことも あり尚更だ。そんな中で思うことは、当然にネガテイブなことになりがちだが、私が癒されるの は、例えばどこにでもある川の堤防の上からの眺めだったり、生まれ育った街の店先に似ている 眺めだったりする。今は儚い運命に思えてならないけれど、私はこれからも路地裏を撮り続ける ことで自分の心の中に光を見出していきたいと思う。

Paradise in Off-Street

 

今にも消えてしまいそうなこの路地裏界隈は、私にとってもパラダイスだった。かけがえのない一部分、人ふたりがやっと通れるくらいの細い路地。そこを昔の人たちは一間道路と呼んだらしい。昭和はじめの木造建築の風情がまだ少し残っている。くねくねと曲がりくねった細い道は、まるで迷路のように見知らぬ人を遠ざける。だから、ここは地元の人たちにとり楽園そのものなのだ。

Memoirs

 

ここは亡くなった両親が一番好きなホテルだった。 「いつか一緒に泊まりましょうよ」 母はいつもそう言っていた。 「朝食が美味しくて素敵なのよ」 幸せそうにつぶやく。 その話になるといつも私に語りかけた。その頃の私は、仕事一筋で心をはこぶ余裕がなかった。 父と母はいつ訪れたのだろうか。しばらくして私はホテルを訪れた。 裏庭が一望できるロビーには、とても大きなドイツ製の一枚ガラスの窓があって、風景が一枚の絵のように広がっている。赤い絨毯が敷きつめられているせいか、かなりの人が出入りをしても音もなくとても静かだ。 落葉樹林の種類がとても多く、新緑のころには庭園を下に降りていったところにある、池や小川に光が差しこんで輝いている。 裏庭のボイラー室の近くに樹齢何年かわからぬほどの大きな落葉の老木がある。もしかすると、明治・大正・昭和・平成と修復を重ねながら激動の時代をかけぬけてきた生き証人のなのかも知れない。いつの間にか私もこのホテルが好きになっていた。

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